安音です♪
大体月に1~2冊程度、図書館で小説を借りてくる私。
その季節に相応しい作品を選んで、日曜日に一気読みすることが多いです。
今月は夏ということで、暑さを和らげてくれるようなお話がいいなと思ってました。
真夏でもひんやりとさせてくれるもの・涼しくなるものといえば。
そう、ホラーですよ。
「夏はホラー小説を読もう」って前々から決めてたんです。
ビビりのクセに怖い話が好きなので、この夏も何か読みたい、と。
※今年のやりたいことリストの中にも書いてます。
>>2021年のマイテーマ&やりたいことリスト100
ということで、借りてきたのがこちら。
↑岩井志麻子さんの短編集『ぼっけえ、きょうてえ』。
表紙からして既に怖いですね。
焦点合ってなさそうな女性の眼差し・・
これは作品と直接関係あるものではなく、大正時代の日本画家・甲斐庄楠音(かいのしょう・ただおと)による「横櫛(よこくし)」という絵なんだそうです。
でも関係ないとはいえ、この小説の雰囲気はまさしくこんな感じ。
借りる時、カウンターのお姉さんもギョッとしたんじゃないかな(苦笑)
全部で4つのお話が収録されてて、舞台は全て明治大正期の岡山。
表紙をめくってすぐ注釈が入ってますが、タイトルの「ぼっけえ、きょうてえ」は岡山弁で「とても、怖い」という意味です。
最初に感想を言ってしまうと、この作品はホラーとはいえ、オカルト的な要素はそれほど強くありません。
描かれてるのはお化けや幽霊ではなく、人間のほうの怖さ。
だから、オカルトを期待した方はちょっと拍子抜けしちゃうかもしれない^^;
私も読んだ後の印象は、怖いというより「うわぁ・・(引)」という感じでした。
表題作の『ぼっけえ、きょうてえ』は、遊郭の女郎がある男性客に、自分の身の上話を聞かせる物語。
全編岡山弁・女郎の一人語りという形で書かれてて、それが一層不気味さを醸し出してます。
女郎は飢饉の年に生まれた「餓死ん子」で、物心ついた時から母親の仕事を手伝わされてました。
彼女の両親は村八分で、母親の職業は間引き専業の産婆。
さらに、おぞましい姿で生まれた双子の姉もいて・・と、とにかく「重い」の一言に尽きる。
私の住む東北も、昔はよく飢饉や凶作に見舞われたという話を聞いたことがあります。
当時の生活って、今の私達からは想像もつかないほど貧しくて、残酷なものだったんでしょうね。
「育てられない」という理由で、生まれる前・もしくは生まれてすぐ命を奪われたたくさんの赤ちゃん。
酷い話だし、それが当たり前だった昔の日本って本当恐ろしすぎる・・
しかも昔とはいえ、ほんの100年くらい前のこと。
人間の歴史でいったらついこの間ですよ。
哀しさと恐さと、もどかしい気持ちと、なんかいろんな感情が湧き上がって変な汗かきました(-_-;)
個人的に印象に残ったのが、2作目の『密告函(みっこくばこ)』です。
舞台は明治時代、コレラが流行し始めた岡山の寒村。
感染者は避病院に隔離されますが、人々は施設での生活と周囲からの差別を恐れ、感染した身内の人間を匿うようになってました。
これを受けて村役場では、住民が感染者を匿名で告発することが出来る「密告函」を設置します。
役人である主人公がその管理を任され、感染が疑われる人を訪ねて回ることになり・・というお話。
あらすじを読んでピンと来た方もいるかもしれませんが、まさに今のコロナ禍とめちゃくちゃ重なる内容なんです。
「あの人に近づいたらうつる」という偏見や、心ない噂。
主人公が管理する密告函は、感染者の名前と共に、住民がその人に対する悪意や恨みをぶつける箱でもあります。
当時と比べて、今の日本は生活様式も大きく変わったし、昔ほど貧しくはなくなった。
でも、いじめや差別・偏見は未だに残ってるし、ネット上では匿名で誰かを傷つけることが簡単に出来てしまう。
時代が変わっても、人間のすることって実は全然変わってないんじゃないかな・・と思いました。
しかも、人ってみんな裏の顔がありますからね。
自分と仲のいい人も、心の奥で良からぬことを考えてる可能性もゼロではないわけで。
このお話の主人公も最後、大事にしていた奥さんの恐ろしい姿を見てしまいます。
「こわーーーー」と思うのと同時に、ちょっと笑いそうになったのは、私が女だからかな?( ̄▽ ̄;)

という感じで、どの作品にも共通してるのは、貧しい田舎の情景と、そこで生きる人間の残酷さを描いてること。
いい意味で生々しくて、読んでいくうちに空気もだんだんじっとりしてきます、本当に。
自然の描写はすごく綺麗だし、海が出て来るお話もあったりするので、是非今の季節にお楽しみくださいm(__)m
安音でした、チャオ♪

